【回答例】
ボンベは頻繁に使われるものですが、その中身は150気圧もの高い圧力になっており、大変危険です。150気圧というのは簡単に言えば、1cm2の面積に150kgの重さがかかっている圧力ですから、ガスが吹き出せばボンベは簡単に吹き飛び、ロケットランチャーとなります(過去に空気ボンベが70mも吹き飛んだ事例があります)。また、中のガスも大量のあることになりますから、ガスそのものの危険性、部屋内の酸素が置換されることによる酸素濃度低下など、気にしなければならない点が多くあります。以下の点について特に気にしてみてください。
1.ボンベの固定の仕方
上述の通り、間違ってガスが吹き出した場合、ボンベはそれ自体が凶器と化します。最悪の場合にそなえて固定しておくことは絶対に不可欠です。
通常、ボンベは立てて置き、固定をしておきます。縦長で重心が高いので、転倒しやすいものです。当然、転倒すれば、その重さで周りのものを破損したり、ボンベについている圧力調整器が折れてガスが流出する可能性があります。地震時など、大変危険が高いです。
ボンベの固定は、一般的には、上下2か所をチェーンやベルトで実験台や壁に固定する方法がすすめられます。金属のボンベ架台を利用する場合には、架台を床にアンカー打ちして固定することも必要です。複数のボンベを置く場合には、1本1本を上下2か所で固定するようにしましょう。
横倒しで置かれることがよくありますが、空になったボンベ以外は極力避けてください。間違ってガスが吹き出した場合、横に跳ぶ可能性があり、大変危険です。空ボンベ等を横にしておく場合は、レギュレータをはずすこと(蹴っ飛ばしてしまうと簡単にもげてしまいます)、転がり止めを必ずすること(アングルの切れ端などが活用できるでしょう)に気をつけてください。
1点での固定は地震などで揺れが来た際に、徐々に滑ってしまい、結果横倒しになってしまうことがあります(過去に大きな地震でそういった事例がありました)。上下2か所での固定が最もいい固定の方法です。ごくまれにビニールひもなどで固定している場合がありますが、ボンベは50kgを超える重いものです。ビニールひもでは耐えられません。
<補足>法規上での固定条件
一般高圧ガス保安規則第6条1の四十二、第6条2の八にはボンベ容器の置き場や置き方についての技術上の基準、第60条には消費における技術上の基準が定められており、転倒防止については、第6条2の八のへに「充てん容器等(内容積が五リットル以下のものを除く。)には、転落、転倒等による衝撃及びバルブの損傷を防止する措置を講じ、かつ、粗暴な取扱いをしないこと。」と記載されています。
具体的な方法の記載がありませんが、高圧ガス保安法の所轄官庁である各都道府県が独自に基準やルールを定めているので、調べるとよいでしょう。
2.ボンベの運び方
業者が指定の場所にまで持ってきてくれる場合は問題ないですが、ボンベの貯蔵庫からの移動や、実験室内での移動などボンベを移動させる場合が多くあると思います。50kgを超える重いもので、且つ、縦長で重心が高いので慣れないと非常に運びにくいものです。運ぶ際には移動用のボンベ架台を用いることが理想です。
架台がない場合や、短い距離の移動などの場合は以下の点に注意するといいでしょう。
・ボンベを若干斜めに傾け、底面の縁を使ってゆっくりくるくると回すように運ぶ
・運ぶ際にはボンベキャップを付け、頭の部分を保護する
・特にキャップがない場合は、手はボンベの頭のてっぺんにおいてはいけません。何かの拍子に安全弁があいてガスが吹き出ると手のひらを直撃します。皮手袋を着用してやや側面から支えるのがよいでしょう。
・誤って足に落としても被害が少ないように、つま先に鉄板の入った安全靴をはくとよいでしょう。
3.ボンベの保有量
繰返しになりますが、高圧ガスは大変危険なものです。大量の保持は大変危険が伴うため、法規上でもその保持量が制限されています。まずは必要のないガスは持たないこと、持つのであれば必要最小限にすることを徹底することが安全上も管理上も大切です。
<補足>
高圧ガスの貯蔵においては、貯蔵量に従って、許可申請や届け出が必要になる場合があります。
配管でつながっている場合、隣り合う貯蔵場所との距離が30m以下の場合、同じ建屋の中、などは、「1つの貯蔵所」とみなされ、貯蔵量を合算して判断します。
大学など各研究室で高圧ガスボンベや液化ガスタンクを置いている場合、1研究室での量が少なくても、建物全体で合算すると届出等が必要になるくらい多い場合があると注意してください。届出なく貯蔵できるガス量は、1つの貯蔵所で容積300m3未満です。(高圧ガス保安法第16条)ただし、液化ガスは10kgで1m3と換算します。(一般高圧ガス保安規則第102条)建物単位で保有量を管理できているとよいですね。
「貯蔵」と「消費」の扱いなど、自治体(高圧ガスの場合、都道府県単位)によって扱いが異なっている場合もあります。必要によっては自治体に確認が必要となりますが、ともかくはまず保持量を最小限にしておくことが大事です。