5-1-1.なぜ実験排ガスの処理は必要か?
有害な実験排ガスが一般施設や住宅の生活環境に害を与え、大気汚染され公害の対象になる可能性が高いので、実験排ガスの処理が必要なのである。
化学実験にて薬品を用いて行なう化学反応、分解、抽出などを行なう際には多量の侵食性の高い有害ガスが発生する。そのためにこれらの実験は作業者に害を与えず、健康と安全を守るために、ドラフトチャンバー/ヒュームフードの中で行い、これらの有害ガスは実験排ガスとして外部へ排出している。
それ故ドラフトチャンバー/ヒュームフードの内部から実験排ガスが実験室内に漏洩し、作業者に危険を与えないために、高度な封じ込め性能が要求されている。
このように実験にて発生する危険な有害ガスが、実験室外即ち建物外にもそのまま排出されると、建物外の生活環境に同様の害を与える可能性が高く、大気環境も汚染され、公害の対象となる場合もある。
特に日本では十分な土地面積を確保することが難しく、研究・実験施設と一般施設や住宅が隣接することが多いため、実験排気の周囲への影響を十分に配慮しておく必要がある。
このために実験排ガスは建物外に排出する前に中和吸収などの除害処理を行ない大気環境が汚染されることをできるだけ防がなければならない。そのために実験排ガス処理装置が必要になるのである。
これらに関係する法律には、労働安全衛生法における「用後処理」、大気汚染防止法、悪臭防止法、PRTR法、がある。
5-1-2.実験排ガスに関係する法律
労働安全衛生法による用後処理
同法の特定化学物質等障害予防規則に基づく第1類物質、第2類物質のガス、蒸気又は粉塵が局所排気装置、生産設備から排出された場合の付近一帯への汚染又は作業場の再汚染、作業者の健康障害の防止にも有効な処理装置等を敷設すべきことを既定したもので、公害の防止にも寄与するものである。
大気汚染防止法の環境基準
実験にて発生する有毒ガス、悪臭ガス等の排出は大気汚染防止法の環境基準として定められている。
環境省の環境基本法のひとつとして大気を汚染する有害物質などの排出に関する環境基準として全国一律にさだめられ「大気汚染に係る環境上の条件につき人の健康を保護する上で維持することが望ましい基準」と定義された。
これらの環境基準に対し、各都道府県によって環境条件が異なるために、この基準に上乗せされた公害条例が定められているので各地域で適合するように対応しなければならない。
悪臭防止法
規制地域内工場・事業場の事業活動によって発生する悪臭について必要な規制を行い、其の他悪臭防止対策を推進することにより、生活環境を保全し、国民の健康の保護に資することを目的としている。
都道府県知事は住民の生活環境を保全するため、悪臭を防止する必要があると認める地域を指定し、域内における自然的、社会的条件を考慮して、特定悪臭物質又は臭気指数の規制基準を定める。
PRTR法
(化学物質排出把握管理促進法)
「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律(別名:Pollutant Release Transfer Register法)」は有害性、蓄積性等のある多種多様な化学物質について、環境中への排出量及び事業所階への移動量のデータを把握、集計し公表すると定められている。
届出対象事業者は、毎年度届け出ることが義務付けられている。