2-4.封じ込め性能



「封じ込め」(containment)とは、局所排気装置がガス等の危険または有害物質を内部に閉じ込めて外部に漏らさないようにする機能を指します。 局所排気装置が持っている封じ込め能力を「封じ込め性能」、その封じ込めがどの程度のレベルで行われているかは「封じ込めレベル」と表現されています。


封じ込め性能は、局所排気装置の使用目的や構造等によって異なります。 ヒュームフードは前面部に可動式のサッシを有し、開口部を介して作業を行いますので、言わば「開放式の封じ込め装置」です。
(図2-4a.参照) これに対してグローブボックスの様に密閉系の空間を有するものは、言わば「密閉式の封じ込め装置」であり、おのずと封じ込め性能が異なります。


図2-4a.開放式封じ込め装置について

ヒュームフードは前面に開口部を有しており、その開口部を介して作業を行う装置です。封じ込めは、開口部から流入する空気のエアバリアによって物理的に行われます。従って、前面開口部や内部の気流性能の良し悪しが封じ込め性能に大きな影響を与えることになります。

ヒュームフードの封じ込め性能を確認する方法としては、日本では有機則や特化側に記載されている風速の測定があります。 (「2-3.排気風量」参照) しかし、実際の使用状況においては、作業者が前に立った動作が伴ったり、前を横切ったり、空調の空気が開口部に当たるなど、封じ込め性能に影響を及ぼす様々な要素が存在します。 風速の測定だけで封じ込め性能を評価することは実際には無理があるため、多くの製造メーカーは海外の規格や基準を引用してテストを行なっています。

ヒュームフードの封じ込め性能を評価する試験方法として、国際的に有名な規格としては、以下の2つがあります。
① ANSI/ASHARE 110-1995
② DIN EN 14175-3 : 2003
各製造メーカーは、上記のどちらかまたは両方に従ったテストを行なって、封じ込め性能を評価しています。

参照:ANSI/ASHARE 110規格による評価方法 表2-4.a
DIN EN 14175-3規格による評価方法 表2-4.b

封じ込め性能をテスト(測定)する段階としては、本来は3段階があります。
①製造時のテスト
②設置後使用前時のテスト
③実際の使用時のテスト (図2-4b.参照)
各メーカーが自主的に行っているのは、上記の①の段階であり、一般的には全台ではなく型式ごとに実施されています。 メーカーのテスト室は封じ込め性能を確実に評価する上で必要な条件が整っており、実際に設置される実験室に比べて有利な状態でテストが行なわれます。


実際の封じ込め性能は、設置された状態(実際の設備が全て稼動した状態)で行われるべきですが、日本では規則や決まりがないため、この様な取組みに対する認識が低く、当初からコストも見込んでいないためほとんど行なわれていないのが実態です。 海外では逆にほとんどの現場において、②設置時使用前段階でのテストが行なわれており、設備や器材の配置が封じ込め性能に影響を及ぼしていることが判明すると、修正を行うという取組みが行なわれています。




図2-4b.封じ込め性能テストの段階